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全身が光の輪から出た黒竜は、光の輪が消えると同時に薄暗くなった一帯で、姿が見えない己を呼び寄せた者の位置を知ろうと鼻を動かす。嗅覚に頼れば例え視覚を失おうともその者を直ぐに察知出来たのだが、今回の相手は竜を補食する魔物の匂いが染み付いた狩人と言っても過言ではない。その為か、黒竜は竜喰いを嗅覚では見つけられなかった。
だが、気配を断とうとも溢れ出る己を狙う2つの殺気に、黒竜は雄叫びを上げる。
大気を震わせ木々に止まっていた鳥達が一斉に飛び立ち黒竜の視界から消える。されど黒竜に向けられた殺気はあった。厳密には雄叫びを上げた瞬間、冷静になり竜喰いと魔狼は殺気を押し殺したのだった。
静まり返り黒竜はゆっくりと森の中を歩き始める。その動きはあたかも己は2匹の存在に気付かずただ歩いているといった具合に誘いをかけていた。
そこで竜喰いは飛びかかろうとするが、恐怖や不安ではない何かが竜喰いを止め、じっとその場で黒竜の動きを見つめていた。
いつも補食する竜とは違うと2匹は確信している。しかし、久し振りのご馳走の竜ということが人ではない魔物の魔狼を動かすに十分すぎる動機となっていた為、魔狼は息を潜めるの止め行動する。
木の葉を散らして涎を垂らし黒竜の背後から飛びかかった魔狼。それを待っていたと言わんばかりに黒竜は振り向き様に鋭い爪を振り下ろす。
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