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素早く振り下ろされる爪に魔狼は体を捻ると黒竜の前足を足場に簡単に避ける。しかし、その動きを予測していたのかの様に黒竜は魔狼の側面から振り返った反動で振った尾を魔狼へとなぎ払う。
宙を舞い体勢を変えて次は尾を足場にと考えた魔狼だったが、前足よりも反動を付けた尾は辺りの木々を抵抗無く薙ぎ倒し迫り、触れれば吹き飛ぶと想像させた。避ける間も無い一瞬。魔狼は上から現れた竜喰いに体を押さえつけられ地面に伏し、目標を失った尾は黒竜を中心に円を作るようにその場の木々を一掃してしまう。
樹齢百数年あるだろう太い木々が倒れ辺りに騒々しい音がこだまする中、竜喰いと魔狼は再び姿を隠す。だが、一度相手を確認した黒竜はその微かな気配も察知して竜喰いめがけて炎を吐いた。
隠れた竜喰いの視界が赤く染まる。そして、竜喰いは迫る炎を跳躍し避けるとまだ残る木の枝を足場に黒竜の頭上へと位置を移した。竜喰いの動きを把握している黒竜はゆっくりと頭上へ頭を向け、その黄金に輝く瞳を見開いた。
唸り声を上げる竜喰いに対し、黒竜も翼を広げ口を開き唸り声を出す。その時、間髪いれずに魔狼が黒竜の背に飛び乗り広げた翼の根元に噛みついた。
鳴き声を上げて体を振った黒竜にも動じず、魔狼は噛みついた顎を前足を突っ張り引きちぎろうと力を入れる。飛び散る鮮血が魔狼にかかる。そして、黒竜がよそ見をした瞬間を狙って竜喰いが黒竜のその無防備となった首もとへ牙を立てた。
激しく翼を羽ばたかせ怒号にも似た鳴き声を上げた黒竜は、宙に舞うなり空を見上げ自信に稲妻を落とした。
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