竜喰い

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   視界が真っ白となる一瞬に、竜喰いと魔狼の体に電撃が走り2匹は黒竜から吹き飛ばされる。咄嗟に黒竜の攻撃を察知した竜喰いは体に痺れは残るもののまだ動けたが、背に乗っていた魔狼は地面に倒れ込んでいた。  自身に稲妻を落とした黒竜にも衝撃があったのか宙に舞ったまま微動だとせず、竜喰いは倒れた魔狼の側に駆け寄った。  目を閉じ浅い呼吸をする魔狼に竜喰いは顔を近付け様子を伺う。だが、魔狼の体から突然煙が上がり毛は抜け皮膚がただれていった。そして、黒竜の強靭な身体をも引き裂いた牙がそこには無く、魔狼は震えそのまま息を止めた。  竜喰いは死んだ魔狼の体に着いた黒竜の血を触ると、触れた指先が焼けるようにただれた。それを握りしめた竜喰いは、兄弟である魔狼の死に怒り未だ空に停止する黒竜へと鳴き声を上げた。  止まっていた時間が動き出す様に黒竜も動きだし、地面から見上げる竜喰いを見た黒竜。魔狼に喰いちぎられた翼の根元は既に再生して傷跡さえ無くなっている。  隕石の如く落下し迫る黒竜に、竜喰いは素早く動き出し森の中に黒竜を誘き寄せた。空の開けた空間より、森で生活し森で狩りをしてきた竜喰いにとってそちらが有利と判断したためだった。  黒竜は薄暗い森に入る竜喰いから目を離さず、木々の邪魔になりそうな翼をたたみ爪で地面を蹴って竜喰いを追った。それも一直線に。例え木があろうとも黒竜はそれを食いちぎり、爪で引き裂き、体で薙ぎ倒し竜喰いへと迫る。  そして、そんな黒竜から逃げるのを止めた竜喰いは、素早く太い木の裏に隠れると息を整えた。  
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