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竜喰いの気配を察知し黒竜はその太い木に爪を立てる。引き裂かれていく木の屑が舞う中、竜喰いは素早くそれに紛れて横へ跳んだ。そして黒竜の爪が再び木に向けて振り下ろされた瞬間、両手足で地面を蹴り飛び交う木屑もものともせず黒竜の首に噛みついた。
竜を補食する竜喰いの狙いは首筋を通る動脈。それさえ食いちぎり出血させればどんな巨大な竜だとしても、数分もするうちに息絶えた。素早く首筋を噛みつき出血と同時に離脱が竜を狩る時の常套手段だった。
そして、黒竜に対しても竜喰いは同じ方法で噛みつき渾身の力で皮を食い破る。今まで以上の力を出せたのは兄弟である魔狼の死が影響しているのかも知れない。
竜喰いを首に付かせた状態で、黒竜は後ろ足だけで立ち上がると首を曲げ竜喰いへ噛みつこうとするが、絶妙な位置にしがみつく竜喰いには顎の先端も届かない。そして、前足で剥がそうと爪を立てるがそれも竜喰いは食らい付く首から口を離さず足で蹴り爪を弾いていた。
首の皮が徐々に引き裂かれ、魔狼を溶かした鮮血が飛ぶが、竜喰いは気にせず動脈を探し食い破り続ける。そして、黒竜は大地を引き裂かんばかりに鳴き声を上げると、翼を広げ一気に空へと舞い上がった。
竜喰い達が住んでいた森を一望できる高さまで上がった黒竜は、次に翼をたたむと急降下した。そして、未だしがみつき首に噛みつく竜喰いを地面と己で落ち潰そうと加速させる。
瞬く間に迫る地面に、竜喰いは森の中に入るなり素早く黒竜から離れ、木々の枝を体に当てて落下の衝撃を和らげる。しかし、黒竜の血を被った竜喰いの体は既に所々ただれ、噛みついていた下顎は牙が溶け、骨が見えていた。
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