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静まり返った一帯で、黒竜は見失った竜喰いの気配を探す。すると、直ぐにそれを感じとり黒竜は鳴き声を上げて竜喰いの気配のする方へと走り出した。
竜喰いの姿があったのは黒竜が木々を薙ぎ倒し空が見える一帯。そして、竜喰いはただれる体を引きずりながら既に骨だけとなっていた兄弟である魔狼の傍らに座った。
背後から黒竜が現れ鼓膜を破らんばかりの咆哮が聞こえたが、竜喰いは魔狼の亡骸に鼻を擦り寄せ一粒の涙を溢した。そして、竜喰いはその場に眠るようにうずくまると、魔狼の傍らで目を閉じた。
敵意も殺気も無くなった竜喰いの姿を見て、黒竜は数秒動きを止めていた。鳴き声を上げて翼を広げた黒竜の首にはもう竜喰いから受けた傷は無く、空間が歪み光の輪が黒竜を呑み込んでいく。
体は大半が骨となり溶けていく竜喰いを見つめながら黒竜は姿を消し、竜喰いはどんな時でも一緒にいた兄弟と共に死んでいった。
再び木々に鳥達が飛んで戻って来た頃。骨だけとなった2匹の周りから突然植物が急速に生え始め、2匹を包み込むように大木が現れる。それは、黒竜が竜喰いを認め、消え行く間際に放った魔法であり、樹木の墓標だった。
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