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魔物とは一線を置く人間とも違う形をした者が、草原を縄張りとした魔物を一掃していた。
蜥蜴の様な姿だが炎を纏うのはサラマンダー。蛇の姿に似ているが鱗は無く顔の両脇にヒレを持つ水のように清んだ青い体を持つのはウンディーネ。翼が4枚長い尾を持つ鳥はシルフ。岩に四肢が着いた様な無骨にも見えるのはノーム。
その4体は四大精霊と呼ばれる地上に住む生命の源とも言える存在だった。
その4体は人間の2倍はあろうかという巨体であり、滅多に人前には姿を現す事はなかった。
それを可能とするのが四大精霊の中心で佇む女性、精霊召喚士がその者達を呼び寄せたからだった。とは言え、そこに姿を現したのは実際の精霊達ではなく、言わば精霊達の分身であった。
人間に害をなす魔物。それを殺すと現れる黒竜を封印する為にと地上に数少ない精霊召喚士に力を貸し、精霊達がこの場に呼び出されたのだ。
耳なりのような音がすると同時に、精霊召喚士の合図があり、精霊達は歪む空間を中心に四方に散らばる。そして、光の輪が現れると同時に火、水、風、地の四大属性の力が精霊達の体を通し流れ始め、黒竜が姿を現すとその力は天高くそこに光の柱を作り出した。
黒竜の視界に映るのはまばゆい光それだけで、己の相手を探す間も無く爪先が、尾の先端が、頭の角が透明な石となっていくのを感じた。
咄嗟に動こうとするものの、黒竜の翼も四肢も重く何かに押さえつけられる様に動かず、ただ黒竜は鳴き声を上げるだけ。そして、その光の柱が細くなるにつれて、黒竜の体は水晶の様に結晶化されていく。
黄金色の眼に微かに見えるのは四大精霊。辛うじて口を動かすことが出来た黒竜は炎や冷気を吐くが、全く精霊達には届かなかった。そして、開いた顎をそのままに、黒竜は遂に全身を透明な石と変えられ光の柱は天へと消えていった。
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