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魔物を両断し剣に着いた血を払った騎士は辺りを見渡し剣を腰の鞘に納めた。幾つもの死線を潜り抜けたのか、騎士の身に付ける防具には大小様々な傷があり、騎士自身にも兜の隙間から覗く顔から古傷が見えた。
祖国で英雄とまで呼ばれた騎士は、単身魔物を倒し続け力を付け技を磨いた。そして、耳なりの様な音を聞き口を真一文字に強く閉じると剣を抜き、視線の先にある歪んだ空間を見つめた。
光の輪から現れるのは唯一無二の最強の生物。その黒い鱗は傷など見当たらない。
黒竜の出現と共に騎士は剣を構え走り出す。それに応えて黒竜は鋭い牙を騎士に見せるようにかぶり付く。
一瞬で騎士が飲み込まれたかと思われたが、騎士は黒竜の上顎を左手の盾で、下顎を右手の剣で受け止め停止していた。しかし、黒竜は間髪入れずにそのまま喉の奥から灼熱の炎を吐き出した。
黒竜の前方に炎が広がり枯れた木々が燃えること無く灰になる。だが、騎士は青い光を帯びその炎に動じず両腕を緩めると素早く剣を振り抜いた。
牙に剣が当たり乾いた金属音が辺りに響く。炎を吐くのを止めた黒竜は口を閉じると騎士を前足で払うが、それを騎士は片手で止めると再び剣を振り抜いた。
騎士の防具には魔法が施されており、炎の攻撃から身を守る事が出来た。しかし、それでも完全に防げるものではなかったため、騎士は一瞬にして灰にはならなかったものの高温の熱に一気に体力を奪われていた。
それでも尚黒竜に一矢報いる事ができるのは死線を潜り抜けた英雄であればこそ。騎士は再び走り出すと黒竜の懐に滑り込み胸に剣を突き立てた。
刃が黒竜の胸に柄まで突き刺さり、黒竜は鳴き声を上げて翼を広げて地面を蹴った。
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