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4.可哀想
次の日、階段の踊り場で何人かの生徒がアベルを囲んで居るのが見えた。喋っているだけだと思ったけどよく見ると軽く突き飛ばされたりしていた。
「きもちわりぃんだよいつもいつも。」
「なんでここに居るの?ぼくはみんなと違います、優秀なんですよ、って優越感に浸りたい?」
「友達もいない、親にも捨てられた、それでよくヘラヘラしてられるよな、その気色悪い面さっさとどうにかしろよなー。」
周りを囲っていた生徒は笑いながら去っていった。
アベルに目をやるとヘナヘナと座り込んでいた、そういえば元々体が弱いと言っていた気がする。息も荒い。慌てて近寄って手を取ろうとしたが跳ね除けられた。
「触らないで。平気だよ。」
すぐに息を整えてすくっと立ち上がった。
「…なぁに?そんな目で見ないでよ。心配してくれたの?そりゃどうも。でも可哀想だともおもったでしょ?そうでしょ?別にきみに可哀想だと思われなくたってぼくが一番ぼくのことを可哀想だと思ってるよ。余計なお世話だ。きみたちがそうやってぼくのことを腫れ物扱いするからぼくがいつまで経っても可哀想なんだ。」
口を挟む間もなく続ける。
「一番の加害者が偽善者ぶらないでよ。どいつもこいつも遅いんだ。かと言って、愛して救わなくてもいいよ。大丈夫。ぼくだけがぼくのことを愛するんだから。」
そう言って早足に去ってしまった。
その後階段の下で倒れていたアベルが保健室に連れられたという話を聞いた。
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