6.死を想え

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6.死を想え

それからは以前の日常がしばらく続いた。アベルの体調も安定していたし、いじめも見当たらなかった。 ある日久しぶりにアベルが話しかけてきた。 「最近よく夢を見るんだ。真っ白い鳩たちがぼくの背中を喰いちぎって、そしたらそこから羽が生えてくるんだ。とっても暑くて痛くて、つらくて涙が出てきて…でもその羽は痛くてとても動かせなくて、痛みが引いたときに目が覚めるんだ。だからぼくはまだ飛んだことないの。どんな気分なんだろう、鳥たちは、蝶たちは、妖精たちは、天使たちはどんな気分で空を飛ぶんだろうね。」 またこちらの返事も聞かずに走り出した。今度はこちらを向いて一言残した。 「メメント・モリ!良い夢を!」 アベルの瞳は灰色のはずなのに、空の色が反射したのか、それか涙が溜まっていたのか、青く澄んだ色に見えた。
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