母の死

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   「ユキ君!」  ガチャガチャと鍵が開けられる。隣に住む幼馴染のヒカリだ。  「ご飯持って来たんだ。ここに置いとくね」  そそくさと退散していった。今は心に余裕が無いのでそっとしてもらえるのはありがたい。  「おにぎりと卵焼きか」  ヒカリとは小さな時からの付き合いで、お互いシングルマザーの家庭で育っていたのだ。去年ヒカリのお母さんが病死してからはお互い家族のような関係になっていた。  「うまい」  塩が効いてる、卵焼きもダシが入ってるのでおいしい、体に染み込む味だった。昔の思い出が蘇る。  悩んだときや困ったときはどうすればいいか。母に聞くといっぱい食べていっぱい眠ればいいのよと言われた。答えになってないと当時は怒ったけど存外正しいのかもしれない。  ヒカリの母親が亡くなったときも差し入れを毎日持っていってたけど、同じ立ち場になるとは思わなかった。落ち込んだ姿を見せるのも良くないことはわかってはいるけど・・・・・。  昼時になって少し元気になったから動き出す。明日まで休みを貰っているけどこれからのことも考えないといけない。コンビニに行こうと表に出るとポストに封筒が入っていた。何気に見ると送り主は母からだった。
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