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羨ましくて、嫉ましくて……ただ隣に置きたかった。
貴方に認めて欲しいだけ。
「い、やっ……」
引き抜かれた針は、致命傷に足りない。
崩れ落ちる膝を虫が這い登ってきた。そこで残酷な彼の意図に気付く。
致命傷にならない傷、即死できない速度で死へと誘う虫の群れ…。
すぐは楽にしない。苦しんで、惨めに食い殺されろ――声にされなかった彼の命令が聞こえる気がした。
女王として魔性達の上に立ち、魔王に手が届くと言われてきた美女は、今や虫達の餌でしかない。
自慢の顔も身体も、美しいと褒め称えられた緑髪や瞳すら……虫たちにとっては魔力を宿す極上の餌だ。
針が抜けた穴から入り込んだ虫が蠢くのを、必死で払う。左右は炎と氷、後ろは針、天井から虫が湧き、地は転移を防いでいた。
ならば、なぜ私の魔法が使えない?
彼は平然と魔法陣を操ったというのに…。
足掻きながら立ち上がり、大量の血を吐き出す。
血走った緑の瞳に映ったのは、己の正面の壁で光る銀の魔法陣だった。他の魔法陣と違う色を纏う記号は、見覚えがある。
彼の魔力を封じるために使った魔法陣に似ていた。つまり…あれが魔法を封じている?
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