第11話 彼の本性

4/11
前へ
/684ページ
次へ
 羨ましくて、嫉ましくて……ただ隣に置きたかった。  貴方に認めて欲しいだけ。 「い、やっ……」  引き抜かれた針は、致命傷に足りない。  崩れ落ちる膝を虫が這い登ってきた。そこで残酷な彼の意図に気付く。  致命傷にならない傷、即死できない速度で死へと(いざな)う虫の群れ…。  すぐは楽にしない。苦しんで、惨めに食い殺されろ――声にされなかった彼の命令が聞こえる気がした。  女王として魔性達の上に立ち、魔王に手が届くと言われてきた美女は、今や虫達の餌でしかない。  自慢の顔も身体も、美しいと褒め称えられた緑髪や瞳すら……虫たちにとっては魔力を宿す極上の餌だ。  針が抜けた穴から入り込んだ虫が蠢くのを、必死で払う。左右は炎と氷、後ろは針、天井から虫が湧き、地は転移を防いでいた。  ならば、なぜ私の魔法が使えない?   彼は平然と魔法陣を操ったというのに…。  足掻きながら立ち上がり、大量の血を吐き出す。  血走った緑の瞳に映ったのは、己の正面の壁で光る銀の魔法陣だった。他の魔法陣と違う色を纏う記号は、見覚えがある。  彼の魔力を封じるために使った魔法陣に似ていた。つまり…あれが()()()()()()いる?     
/684ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1173人が本棚に入れています
本棚に追加