第2話 雨の日のお邪魔虫

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 青年の言葉を聞き「女……もしかして私か?」とルリアージェが動く。身動きできない魔物の前にしゃがむと、長い爪が伸ばされた。 「おまえっ!」  どうやら探していたあの女とやらは、ルリアージェで間違いないようだ。だが爪が届くより、ジルが爪を折る方が早かった。  いつの間に手にしていたのか、黒い刃のナイフで手首と地面を切り裂く。  柔らかな果物の切り口のように、地面が30cmほど切れた。叩き斬られた両手と一緒に、切れた金髪が泥の上に散る。  基本的に痛覚が鈍い魔物は、悔しそうに歯を食いしばるが悲鳴は上げなかった。 「次は首を落とす」  声は鋭く冷たく響いた。  ルリアージェに危害を加える存在を許す気はないと告げる声色とセリフに、魔物は悪あがきを止める。大人しく地に伏せたままの魔物に、ジルは首を傾げた。 「ルリアージェが目的だとして、心当たりは?」 「ない」  即答するルリアージェだが、彼女は基本的に興味がないことは覚えない。必要な説明も興味がなければ聞き流してしまうため、断言されても当てにならなかった。  まだ一緒に旅をしてひと月だが、互いの性格は把握している。 「うん、覚えなかったんだな」 「……否定はしない」  ルリアージェの微妙な返答に、忘れられた……というか。最初から覚えてすら貰えなかった魔物が叫ぶ。     
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