第2話 雨の日のお邪魔虫

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「おまえ! あれだけ封じたくせにっ!!」  ぎりりと握り締めた拳をたたきつけて怒る姿に、ルリアージェは考え込む。  逆にジルは心当たりに気づいて溜め息をついた。  あれだけ封じた――複数の魔物を封じた現場は見ていないが、魔物を封印した石を売ったのは知っている。店主が言うままの安値で買い叩かれそうになり、慌てて間に入ったのだ。  交渉感覚皆無のルリアージェに代わって、しっかり高額で売り捌いた当事者だった。 「ルリアージェ、数日前に町でたくさんの封印石売っただろ。あれ、どこで封じたの?」  ここまで誘導されれば、さすがのルリアージェも思い出す。立ち上がってぽんと手を叩く。 「二月ほど前に訪れた町で封じた。若い女性が何人も犠牲になったようで、仕事を依頼された」  町に常駐する魔術師は少ない。  大きな都市ならば別だが、たいていの魔術師は存在が秘されており、ギルドに依頼を出して派遣してもらう形が主流だった。当時はまだ追われていなかったルリアージェも、派遣されて町の魔物を封じたのだ。  当初の想定より数が多かったけれど…。 「なんだ、逆恨みか」  ルリアージェは無自覚に、魔物の傷を抉る。     
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