第2話 雨の日のお邪魔虫

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 事実を口にしたのだが、この素直で悪気ない言葉が彼女の欠点だった。相手の気持ちを思いやるより先に言葉を吐いてしまう。  ちゃんと詫びることは出来るので、性格が悪いわけではないが…。まあ、町の中で人に囲まれて生活するのは向いていないだろう。 「ルリアージェ……それ以上は(状況が悪くなるから)黙ってて」  空気を読むことに長けているジルが、これ以上の発言を制止する。足元で怒りに震える魔物に、少しばかり同情を向けた。  ルリアージェとのお茶の時間を邪魔したことや、彼女に火傷を負わせる原因となったのは許せない。しかしあっさり負けた上、ここまで無邪気に傷口を抉られるのは気の毒だ。 「……いいや、もう帰れ」  背を踏んでいた足と、威圧していた魔力を散らす。とたんに跳ね起きた魔物は距離をとり、こちらの出方を窺っている。動かず睨み付けてくる魔物へ、ひらひらと手を振った。 「帰れって。あと、もう来るなよ」  ジルの態度が豹変した理由はわからないが、逃がしてもらえると判断したらしい。ふわりと浮いて空中に溶け込むように姿を消した。 「覚えてろよっ!!」  最後に余計な一言を残して―――。
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