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腰を撫でたジルの手を払おうとして動きを止めた指が、まるで彼と手を絡めるみたいな位置で止まる。
「助かった」
素直に礼を言って笑う美女――腰を抱いて微笑む青年。
はたから見れば外でいちゃつくバカップルにしか見えないが、ルリアージェにその自覚はなかった。もちろんジルは計算尽くの行動だ。
鈍い彼女に手を出されないよう、しっかり周囲に釘を刺す必要があった。
着飾ったルリアージェはお世辞抜きに人目を集める。
当然キレイなお姉さんを好きになる人もいれば、よからぬ悪さをしようとする連中も出るだろう。
どちらもけん制しておかなくては、ジルの仕事は増える一方なのだ。もちろん、本人はその騒動を含めて楽しむつもりだが。
腰に回した手に絡んだ指、ほっとした顔で礼を口にする令嬢、どう見てもお似合いの美形青年は微笑を浮かべて抱き寄せる。こんな甘い空気を割って入れる強者はいなかった。
しかし……空気を読まない輩はどこにでもいる。
見つけた屋台の食べ物に目を輝かせるルリアージェの為に、串焼きをもって戻ったジルが凍りつく。彼女を取り囲む数人の男達、ガラが悪い連中は無造作に美女へ手を伸ばした。
「ねえちゃん、こっちにきて……」
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