第1話 まずは腹ごしらえ

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第1話 まずは腹ごしらえ

 大陸ひとつを統治した古代帝国アティンは、『大災厄』によって一夜にして滅亡した――この大陸ラグーでは、小さな子供にも知られた御伽噺(おとぎばなし)だ。  精巧で高度な技術を誇り、魔術をもって大陸を支配し、すべての国家を統一した帝国だった。今も使われる魔術のほとんどは『アティン帝国の遺産』だと言われている。  統一に反対した国をまるごと焼き払った伝説をもつ帝国を、わずか一夜にして滅亡させた『大災厄』がどんなものなのか。  病気、神々の怒りに触れた天罰か。  それとも噴火などの天災であったか。  今も謎のままである。  ――◆―――◇―――◆―――◇―――◆―― 「……いっそ、謎のままでよかった」  森の中に張られたテントの前で、彼女はぽつりと呟く。見上げる先には2つの月が並んでいた。  今夜は月の距離が近いため明るい。  アティン帝国滅亡後、残った貴族達が各々国を興し、いまでは9つの国が大陸を分断していた。  帝国滅亡の原因となった『大災厄』の正体をうっかり――本当に手違いだったのだが――手にした為に彼女は3つの国から指名手配されているのだ。     
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