第3話 馬子にも衣装

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第3話 馬子にも衣装

 あの恩知らずめ。 「……次に会ったらぜってぇ殺す」  物騒な呟きがジルから零れる。ついでに殺気も駄々漏れなのだが、ルリアージェは「まだ子供なのだろう、許してやれ」と的外れな返答をよこした。  魔物の年齢は人間以上に見た目で判断してはいけないのだが……。  ちなみに、彼女は散ってしまった白い花の、折れた茎を助けようと苦戦している。近くに落ちていた小枝を添えて、なんとか立たせることに成功した。  灰色だった空は徐々に切れ間があらわれ、鮮やかな青が時折見え始めた。まだお昼前のため、予想していたより早く雨が止んだ形だ。厚い雲の様子から、夕方まで降ると考えていた。  まさか……あの魔物が雨男(?)だったりして。逃避しかけ、ジルは首を横に振った。こんな無駄をしている場合じゃない。 「どうする? 移動するなら準備しないと」  雨が止んだなら、敵襲された同じ場所に留まるのは危険――ジルに言わせれば面倒――だった。しかもリベンジを誓って捨て台詞を吐く魔物だ。再び襲われる可能性を想定するのは当然だろう。  幸いにして、仲間を連れて来襲するのは考えにくい。     
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