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赤い車は進んでいく、右へ、左へ、また右へ
ふと、違和感を覚える、
おかしい、いつもと通る道が違う
そして胸騒ぎがした、嫌だ、行きたくない
…きっとこれは、彼との別れを察しての事だろう。
車は到着した、
(心臓がうるさい)
目的地に着いた
(ダメだ、見ちゃダメだ)
そこは
(知っちゃだめ、それは――)
―――墓が沢山並ぶ、墓地だった
「あ、あれ?」
彼は俯き、歩く
「ねえ待って、どこ行くの?」
彼は止まらない
「お願い、止まって」
彼は止まらない
「ねえ、やめてよ…お願いだから…」
彼は止まらない
「やめて、お願い、やめて」
彼は、止まった。
彼の手には、花
彼の前のそれは
「あ、ああ、あああああああぁあぁぁあああああぁぁぁぁ!!!!!」
絶叫する、声は届かない、こんなに近くに居るのに
フラッシュバックする、映像
電車の警笛
彼は何かを叫んでいる
踏切は、降りていなかった
近づく鉄の塊
ああ、わかっていたんだろう、頭の中ではわかっていたはずだった
つまりは、「そういう事」だった。
「嘘だ」(嘘じゃない)「こんなのおかしい」(これが現実)「夢だ」(現実だ)「どうして」(これが、現実)
自問自答を繰り返す、
ふと、彼を見る
彼の目には、涙
彼はその場にうずくまる
彼の嗚咽が聞こえる
彼は呟いた
「どうして」
と。
悲しくて、辛くて、彼のこんな姿を見ることが、苦痛で、涙が出てきた
私は彼と最後のデートをした、
でも未練がましく、その後を知りたくなった
未練は、果たされた
私が消えていくのが、私というものが薄れていくのがわかる
だから、私は涙を拭って、彼に向かって、言った
「ありがとう、さよなら」
消えていく刹那、彼の涙でぐちゃぐちゃな顔が、こちらを向いた気がした。
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