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火曜日と水曜日はストライキを起こしたから仕方なく登場しましたよ、と言わんばかりに踏ん反り返りつつも、いやいや、最初から木曜日だったからいい加減認めなさい、という無慈悲さを抱えてその木曜日は居座っていた。
俺は額に手を当てる。
ああ。また、これが来たか。
「はあ、なにそれ。あんた小説でも書いてたっけ?」
「お話ではない。現実におきていることだ」
「もっとわけわかんないわ。なに、死ぬの?」
ノリコはいつもこういう言い方をする。自分に理解のできないことは、死ぬことになるらしい。それが可愛いと思うこともあったが、この火急の事態では神経が逆撫でされるばかりだ。
「その質問は極めて難しいが、ここに俺という存在があって、それを生きているというのなら、死んでないと捉えられると思う」
「あー、またヤストが語り始めた。その喋り方なんとかなんないの? 逆に頭悪く見えるよ?」
極めて真摯に質問に答えたつもりだったが、ノリコはお気に召さなかったようだ。頭の良し悪しの話にすりかえられてしまった。ノリコと話していると、こういうこともよくある。
俺は根気強くこれまで話してきた内容をもう一度説明した。
「喋り方についてはすまない。ただ、これだけはわかってほしい。曜日がスキップし始めた。俺の感覚が狂い始めた証拠だ。もうこの世界に耐えていけないらしい。だから、別れてくれ」
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