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ノリコの目に涙が浮かんでくる。俺はそのノリコの肩を優しく包んで思い切り抱きしめた。
「今まで、ありがとう。ノリコとの思い出を胸に俺は次の世界で生きるよ」
ノリコが俺の背中に腕を回した。想いが通じ合う。たしかにわがままなところもあった。俺とちょっと合わないなと思うところもあった。けれど、好きだった。弾けた笑い声も俺にかける甘える仕草も大好きだった。
「さよならだ。ノリコ」
ひとつ、キスを落とす。俺は長いこと最後のキスを離せずにいたが、そのうちゆっくりとノリコが眠りに落ちた。俺が話した内容は夢と現実とのあやふやな中でノリコの内をただよって、やがて本物になるだろう。
束の間の夢を。さよならが少しでもノリコの中で長引くように。
この結末をノリコが誰かに語れるほどになってくれることを願う。いつか笑い話にしてくれたらいい。いつの日かノリコが幸せになることだけを願って、俺はノリコの家を後にした。
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