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しばらく、ぼんやりしていると、さっきまで真っ青だった空が、曇っているのに気付いた。引き返すために泳ごうとすると、思ったよりも下が見えないことに驚いた。私の周りには、誰もいない。 背中を、冷や汗が伝っていくのが、わかった。見回しても、周りは同じような海が広がっているだけ。自分がどこからきたのか、わからない。 とりあえず、進んでみる。だけど、この方向に進んだら浜辺から遠くなってしまうかもなんて考えると、思うように進めない。 もし、帰れなかったら。まどかやにこりやくららやみんなに、もう、会えなかったら。嫌だ。怖い。ぶるっと、背筋が寒くなる。 いつもは優しい海が、今はもの凄く恐ろしいものに感じられる。 「キミ、大丈夫?」 そんな不安や恐怖に苛まれていると、背後から、私の名前を呼ぶ、声が聞こえた。と、同時に手首をギュッと掴まれる。 振り向くと、シュノーケル用の大きなゴーグルをかけた男の人が、真っ直ぐに私を見ている。正直、ゴーグルが邪魔で顔はわからないけど、太陽も見えないのに、彼の瞳は輝いて見えた。 「ここ、結構深いから危ないですよ。もうすぐ天気も悪くなる...。」 ギュ。 「こわかった...。」 やっと、人に会えた。安心した私は、思わず、彼に抱き付いてしまった。言っておくけど、くららじゃないし、いつもはこんな簡単に男の人に抱き付いたりはしない。彼が、とっても綺麗な瞳をしていたから、妙に安心してしまったんだ。 「あ...その。」 「......っ。ご、ごめんなさい。」 離れると、彼は私が顔を覗き込む前に、パッと、水の中に潜ってしまった。そのまますぐに水面から顔を出すと、綺麗な瞳を垂らして、言った。 「戻りましょう。」
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