350.ずっと一緒に生きていこう(最終話)

1/3
3944人が本棚に入れています
本棚に追加
/1372ページ

350.ずっと一緒に生きていこう(最終話)

 この世界に落ちて、たった2年半――最初は見上げた玉座の前まで上り詰めた。  貴族が序列順に並び、壁際に侍従や侍女が控える。前列に護衛の近衛騎士団が整列していた。もっとも近い位置には、各国の王族や高位貴族が招待されている。正装した人々が並び立つ2人に一礼した。  無駄な音や動きのない光景は、いつもリアが背負ってきた重責を実感させた。こんなに重いものを、華奢で可愛いリアが支えていた。身の安全のために性別や名前さえ偽り、命を狙われながら国を守ってきたのだ。  これからはオレも背負うし、リアはオレが守り抜く。覚悟を新たに、リアの言葉を待った。 「婚礼に集まってくれた人々に礼を言う。私、ロザリアーヌ・ジョエル・リセ・エミリアス・ラ・コンセールジェリンは、中央の国の皇帝として……隣に立つキヨヒト・リラエル・セイ・エミリアス・ラ・コンセールジェリンを夫とすることを宣言する。長き竜の命が尽きるまで愛し抜くと誓おう。女帝として、夫とともに国を守り民を慈み、周辺国と手を取り合い平和を維持していく」  凛とした声で、言い切ったリアの誇らしげな顔に、次はオレの順番だと気合を入れ直す。 「我、キヨヒト・リラエル・セイ・エミリアス・ラ・コンセールジェリンは、麗しきロザリアーヌ・ジョエル・リセ・エミリアス・ラ・コンセールジェリン陛下の夫となり、愛し抜くことを誓う。異世界人としての知識、聖獣5匹の主君として、この世界を豊かにすることを願う」  わっと拍手が起こり、リアと顔を見合わせて微笑み合う。この世界では宗教がなく、神も認識されていない。ここを改善するのも、おそらくオレの役目だろう。神が直接世界に干渉できないのは、宗教の概念がないからだ。存在しないはずの神が、この世界に関与できるよう祈りを広げる。  ま、そんな大層な話は年老いてからでも十分できる。今は奥さんになったばかりのリアと幸せになることが重要だろ。聖獣がそれぞれに寿ぎを贈り、各国からも祝いの品や言葉をもらった。玉座に腰掛けた彼女の脇に立ち、オレは座らなかった。あくまでも主役はリアで、オレは添え物でいい。  手を繋いで微笑むリアは礼をいい、様々な人々の名を間違えずに呼んで感謝を伝えた。これが国の頂点に立つ者、オレの最愛のリアだ。誇らしくて、胸がいっぱいになった。
/1372ページ

最初のコメントを投稿しよう!