01.いきなりの死亡宣告

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 サバイバルゲーム、略してサバゲーを知っているだろうか? エアガンでBB弾やペイント弾を撃つ戦争ごっこだ。  山の中で数日かけて大規模なイベントが行われた。  普段は山のぼりなんて絶対しないオレも参加したのだが、そこで予想外の事件が起きる――異世界物では定番の展開らしい。 「下がれ!」  仲間の声に数歩下がる。目の前を通過したペイント弾にほっと一息ついた。 「助かった」  手を上げて感謝した直後、構えた小銃で敵を撃つ。真っ赤なペイントが敵の肩を染めた。  当たった瞬間は多少痛いが、よほどの至近距離でなければケガはしない。致命傷となる頭部、心臓以外は3発まで死亡とみなされないルールだった。  専用ゴーグルやヘルメットを装着しているため、頭を狙っても構わない。  こういった大会は安全を優先して頭部を狙えない場合も多いが、この大会は毎年過激になっていく傾向があった。  もう、戦場そのものと称しても過言ではないレベル――だからこそ、他のイベント優勝者など強者が集い、さらにイベントは盛況となり過激になるのだ。 「DD、そっちに2人行ったぞ」  無線から聞こえる声に「あいよ」と軽く答える。DDというのはサバゲーで使っている通称だった。  皆が通称で呼び合い、逆に本名など知ろうともしない。この場限りの付き合いだからこそ、遠慮なく互いを利用しながら戦争ごっこをしていられるのだ。  2人――周囲に警戒しながら匍匐前進する。  がさがさと草の揺れる音がして、左側へ銃口を向けた。  息を殺して待てば、周囲を見回しながら歩く男が1人。 「よし、1人目!」  彼の耳の位置に照準を合わせ、ゆっくり引き金を引いた。  パンッ!   発射音は義務付けられている。そのため撃ったらすぐに移動しないと、居場所が特定されてしまう。  赤いペイントでヘルメットを塗らした男は死亡とみなされ、もう攻撃される心配はなかった。  急いで身を起こした直後、ぞわっとした。肌が粟立つ感じだ。  振り返ったが誰もいない。だが何かがいる気がして……視線を上に向けた。  木の枝に足を引っ掛けてぶら下がる女が銃口を向けている。  っ、間に合わない!!  次の瞬間、咄嗟に後ろへ飛び退いた。  全力で回避する。勉強はイマイチだが、運動神経や勘が良かったこともあり、サバゲー界では結構名が知れている。  いつも通り生き残れる自信はあった。  それがいけなかったのか。  油断大敵とは正にこのことだろう。2人いると注意されていたのに見落とした。  鼻先すれすれを弾が通過する。見える筈がないのに、まるでスローモーションみたいにはっきりと動きが目で追えた。  ちょっと映画かアニメの一場面のようだ。ぎりぎり回避された弾に安堵の息をついた。  直後、身体が浮遊する。 「え?」  ふわりと浮いて、足が泳ぐ。そう、踏みしめるべき地面がなかった。  記憶はそこで途切れる。
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