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サバイバルゲーム、略してサバゲーを知っているだろうか? エアガンでBB弾やペイント弾を撃つ戦争ごっこだ。
山の中で数日かけて大規模なイベントが行われた。
普段は山のぼりなんて絶対しないオレも参加したのだが、そこで予想外の事件が起きる――異世界物では定番の展開らしい。
「下がれ!」
仲間の声に数歩下がる。目の前を通過したペイント弾にほっと一息ついた。
「助かった」
手を上げて感謝した直後、構えた小銃で敵を撃つ。真っ赤なペイントが敵の肩を染めた。
当たった瞬間は多少痛いが、よほどの至近距離でなければケガはしない。致命傷となる頭部、心臓以外は3発まで死亡とみなされないルールだった。
専用ゴーグルやヘルメットを装着しているため、頭を狙っても構わない。
こういった大会は安全を優先して頭部を狙えない場合も多いが、この大会は毎年過激になっていく傾向があった。
もう、戦場そのものと称しても過言ではないレベル――だからこそ、他のイベント優勝者など強者が集い、さらにイベントは盛況となり過激になるのだ。
「DD、そっちに2人行ったぞ」
無線から聞こえる声に「あいよ」と軽く答える。DDというのはサバゲーで使っている通称だった。
皆が通称で呼び合い、逆に本名など知ろうともしない。この場限りの付き合いだからこそ、遠慮なく互いを利用しながら戦争ごっこをしていられるのだ。
2人――周囲に警戒しながら匍匐前進する。
がさがさと草の揺れる音がして、左側へ銃口を向けた。
息を殺して待てば、周囲を見回しながら歩く男が1人。
「よし、1人目!」
彼の耳の位置に照準を合わせ、ゆっくり引き金を引いた。
パンッ!
発射音は義務付けられている。そのため撃ったらすぐに移動しないと、居場所が特定されてしまう。
赤いペイントでヘルメットを塗らした男は死亡とみなされ、もう攻撃される心配はなかった。
急いで身を起こした直後、ぞわっとした。肌が粟立つ感じだ。
振り返ったが誰もいない。だが何かがいる気がして……視線を上に向けた。
木の枝に足を引っ掛けてぶら下がる女が銃口を向けている。
っ、間に合わない!!
次の瞬間、咄嗟に後ろへ飛び退いた。
全力で回避する。勉強はイマイチだが、運動神経や勘が良かったこともあり、サバゲー界では結構名が知れている。
いつも通り生き残れる自信はあった。
それがいけなかったのか。
油断大敵とは正にこのことだろう。2人いると注意されていたのに見落とした。
鼻先すれすれを弾が通過する。見える筈がないのに、まるでスローモーションみたいにはっきりと動きが目で追えた。
ちょっと映画かアニメの一場面のようだ。ぎりぎり回避された弾に安堵の息をついた。
直後、身体が浮遊する。
「え?」
ふわりと浮いて、足が泳ぐ。そう、踏みしめるべき地面がなかった。
記憶はそこで途切れる。
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