01.いきなりの死亡宣告

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「起きた?」  笑顔で覗き込む子供の姿に、反射的に飛び起きた。  サバゲーの大会に子供は参加できない。すくなくとも18歳以上で、未成年は親の承諾が必要だった。  その現場に現れた子供、しかも戦闘中だった自分を覗き込んでいる状況に混乱する。 「え? なんで、えっ?」 「落ち着いてよ」  にこにこ愛想のいい子供は10歳前後だろうか。  咄嗟に距離を置いたオレを手招きし、自分は芝の上にぺたんと座る。ぽんぽん隣を叩いているのは、ここに座れという意味か。  素直に近づいて座ろうとして気付いた。 「芝……?」  会場は山の中腹だった。木々が生い茂り鬱蒼とした、手入れがあまり行き届いていない山だ。  頂上にゴールは設定されているが、そこも大木があるだけの筈。  見回した視線の先はすべて芝の大地――遮る木1本もない、広い草原のような景色だった。 「うん、座りやすい環境にしてみた」 「まるで作ったみたいに言うんだな」 「創ったからね」 「へぇ……ん?」  つくった? 何を?  凝視するオレを子供は笑顔で待っている。  ぱくぱくと口は動くのだが、言葉が出てこなくて……情けなく再び口を噤んだ。 「混乱させて悪いね。一応、僕は君達の言う『カミサマ』って奴です」 「はあ……」  歯の間を空気が抜けるような、間抜けな返答が漏れる。そんな反応にも、自称・カミサマは気を悪くした様子はなかった。  芝の上にへたり込むように座ったオレに状況を説明していく。 「ほら、異世界物の小説って読んだことない? アレって現実にあるんだよね。手違いやミスで死んじゃう人もいるけれど、今回は向こう側の要請で君を選びました」  突込みどころ満載の話だが、頭の中はパンク寸前。  やはり口から零れるのは「はあ…」という溜め息に近い相槌だけだった。  座った芝をなんとなく撫でながら、『ちくちくしなくて柔らかい芝だな』なんて現実逃避するのが精々だ。  もう正気を保って話を聞けているのか、自分の精神状態さえ疑う状況だった。
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