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「あ、あぅぅ……」
カイアルに睨まれた葵奈は、さながら蛇に睨まれた蛙のように、がたがたと体を震わせ、両足をこすり合わせると、股の間を閉じていた。
「お、おい葵奈、おまえ……」
「い、言わないでください蒼獅様、お願いです!」
悲鳴じみた声を上げ、股の間を抑えながら必死に湯船から上がると、岩の影に隠れ、しくしくと泣きながらお湯をかけていた。
「大丈夫かい、あのお嬢さん、泣いているようだけど」
「あいつのことはどうでもいい、お前何者だ?」
齢四十代とおぼしき男は、にやにやと口の端をあげ話をすると、不機嫌に蒼獅が言い放つ。
「おお、怖い怖い、さっき説明あったろ、島添将希だ」
「んなこと聞いてねぇ、お前の素性を聞いてんだよ!」
将希の眼前にずかずかと歩き、見下ろし射殺すような視線で、睨み付ける。
「蒼獅様、そして皆様、申し訳ありません、このような事になるとは思っていなかったもので。少し落ち着いてからお話しませんか、この状況は……」
沙知絵は申し訳なさそうに声を漏らし、辺りを見回す。
岩陰で泣く娘に、必死に大男を抱きかかえようする、少女と、それを手伝う少年。にらみ合う、中年男性と、青年に、それを見つめ大きなため息を吐く女性。
まさに阿鼻叫喚の地獄絵図であった……。
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