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「でも、私の言葉はきいてくださいましたよね」
不満そうに言い放つ蒼獅に、娘は微笑み、言葉をつづると、それに苛立ちを見せた蒼獅は、手に持っていた刀を、娘へと投げ捨てる。
「うわぁ、と、とっ!刀を投げないでください、危なひへふ!」
一瞬それに手を伸ばした、娘であったが刃先が、その手に向いたため青ざめた顔で、手を引っ込めると、水を生みだしてそれをそっと絡め取る。同時に文句の言葉を青年に告げたのだが、途中で頬をがっちりとつかまれると、そのままひっぱられた。
「一言多い。刀に血が付いた、綺麗にしろ、葵奈」
「やへへくははい、いはいへふ!(やめてください、痛いです!)」
涙目になりながら、抗議の目を向けた娘、葵奈は、その瞬間蒼獅に思いっきり、頬をひっぱられて離される。
「ひ、ひゃう!」
思い切り引っ張られたことで、手を離された痛みに、声にならない悲鳴を上げると、真っ赤になった頬を涙目になりながらさする。
「後ですよ、怪我人の手当てが先です」
頬の痛みをこらえながら、はぁとため息をつくと、衣服の裾をなびかせるように、くるりと振り返り、沙知絵のもとに歩み寄り、その体にそっと触れる。
「あなた方は……、それにこの力……」
「通りすがりの巫女ですよ。水の癒しが得意なのです」
触れた手から、水の煌めきで、腕に出来た傷を覆い隠すと、沙知絵の傷が癒えていく。
「水の癒しは、龍人族の方が得意と聞きます。あなたは龍人なのですか」
「お詳しいのですね。隠しているわけではないのですが、知られると不都合もあるので……」
沙知絵の言葉に、一瞬驚いたような顔をした葵奈は、軽く目を瞑りながら、息を吐くように言葉を返す。
葵奈は、自らの頭部に隠していた角を、答えの代わりに出現させながら、語尾を弱めるようにつづり、話終わると同時に再びそれを見えないように、視界から消した。
「主である。遼輝様は皇族で、それに仕える我々も龍人族とは、少なからず縁がありますゆえ」
「そうですか、皇族の方でしたか……」
淡々と話す沙知絵の言葉を耳にし、表情に影を落とした葵奈は、視線を下にむけると、声質が重くなっていた。
そんな葵奈の様子に、沙知絵は小首をかしげながら、思案するように顎に手を添えていた。
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