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開閉可能な肩胛部を滑らせると、中から筋繊維に似た極細のケーブルの束と共に、棘上の小突起が左右交互に付いた、私の体長とほぼ同じ長さのチューブが躍り出た。
私の真紅の躯と対照を成す、透明な翠緑色をした二本のそれは、屍の裂傷のあとを器用に探り当て、私の意思とは全く無関係に、深々と刺さった。
毛細管運動なのか、ただ吸引力が働いているのか、その中を血液と共に濁った液体が、私の内部へと運搬される。それらは然るべき箇所で濾過されたあと、老廃物を腰の上から伸びたチューブで外に吐き出して、体内を循環する磁性体液に還元されて、文字通り私の血肉となる。
飢えが満たされると、ケーブルが引き抜かれ、元通りに納される。あと6時間23分供給無しで最高精度の活動が可能となる。戦闘を行わないとして、出力を極限まで抑えた場合は、18時間15分の活動が可能。その間に補給を欠かさなければ、成長も老いも知らぬ、ただ恒常を保たんとするばかりの私の躯は、実質永久機関だ――
――そんなものはごめんだ。
時の権力者によって葬られた真の歴史を掘り起こすという大義名分のもとに、他国領の史跡に土足で踏み入り、資源を大量投入し、人を同様に物質のように消費し、殺し合い、互いの領地を血で染める、"聖戦”を続けるための、永久機関ならば。
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