2、 黒朱雀

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ーどういうこと? 紅仁は自分が置かれている立場が理解できず、混乱した。 「ふん、状況が飲み込めないという顔をしているな」 紅仁をあざ笑うように続けた。 「そうだな、まず先ほど星黎が話そうとした話の続きをしてやろう」 朱陽国の王は、初代国王である朱雀の神の力を代々引き継ぐが、ここは人の世、時が経てばその力は弱くなる。だから数百年に1度、同じ神の力を持ちながら異界に飛ばさせた真紅の髪の娘と契りを結ぶことで、その力を回復させた。 だがある年、いつも通り天から舞い降りた娘の様子がおかしかった。真紅であるはずのその髪は濡烏の色をしていた。それに通常一緒に来るはずの侍女も荷物も一切なかった。 驚いた王たちは娘を問いただした。すると娘はここへ来る途中で妖魔に襲われたのだと答えた。侍女は殺され、着の身着のまま井戸へ飛び込んだのだと。言われてみれば、娘の着物は乱れ、所々に返り血のようなものがついていた。王たちは娘を憐れに思い、予定通りに妃に向かい入れた。 ところが話はここで終わらなかった。娘が王家に輿入れして間もなく、国を大地震が襲い、津波でいくつもの街が飲み込まれた。それだけにとどまらず、政は数多の裏切りで腐敗し、国中を飢饉が襲った。まさに朱陽国史上最悪の事態だった。
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