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「覚えておりません。いえ、知らないという方が正しいでしょうか。私は真紅の髪のせいで両親から嫌われ、名前すら呼んでもらえず、そのまま捨て子となりました」
「……」
急に朱雀帝は押し黙った。かと言って誤解が解けたようではなかった。紅仁の首元には相変わらず刃が突きつけられていた。
「名前がわからなければ術は使えぬ。この懐刀で喉をかっさくのも酔狂だが、まあ、よい。とりあえず生かしておこう。」
そう言って朱雀帝は紅仁に侮蔑の目と冷笑を浴びせて、紅仁を放した。
そして扉を開けて、声を張った。
「星黎!星黎はいるか?」
「はい、陛下。ここに」
すぐさま星黎は階段の下に行き、最敬礼をとった。
「星黎、あの娘を後宮に閉じ込めておけ」
「し、しかし…」
忠誠心の高い星黎は今まで、自分の主である朱雀帝の為にならないものは一切消去してきた。今回も例外なく星黎は、黒朱雀である紅仁を殺すべきだと思っていた。
「星黎!」
「ははっ!畏まりました。」
朱雀帝の冷たい威圧に負け、星黎は結局承諾してしまった。
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