2、 黒朱雀

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2、 黒朱雀

馬を走らせること半刻。 段々と道の両脇に広がる店の雰囲気が変わってきた。最初は野菜や肉、魚など生活に必要な食べ物や糸や布などが中心だった。だが今は珊瑚や真珠を贅沢使った髪飾りなどが店先に並び、、鱶鰭(ふかひれ)をふんだんに使った高級料理店が軒を連ねた。 「王都に入ったから、段々店も庶民から貴族や王族向けの品ぞろえになっていく」 不思議そうに店先を眺める紅仁に、朱雀帝は品のある声で優しく教えた。 それからさらにもう半刻くらいが過ぎ去ろうとしたとき、何やら目の前に大きな建物が見えた。 「あれが我が朱陽国の城、我々が暮らす城だ」 「…え?!」 紅仁は驚きのあまり小さな悲鳴をあげた。 目の前にある壁、城壁はあまりにも横に広く広がっていた。そして城に入る門の様子は紅仁の知っているものと大分違った。また天守閣も一切見えなかった。 紅仁は何だか違和感を抱き、同時に少し嫌な予感がした。 ふと紅仁は道の脇で店番をしている男の服に目を向けた。そしてそのまま視線をずらして、それを買おうか買うまいか悩む貴人の装いを確認した。 最後に自分を支える朱雀帝の袖を確認する。 -やっぱり。 紅仁は遂に自分の違和感の原因を認めた。
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