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「食べ物じゃないものか……」
慶一郎は抽選会のポスターを見る。
一等は国内旅行、二等は商品券10万円、三等は松阪牛であった。五等まで景品はあるらしい。
まぁ、さすがにそんな高額商品は当たらないだろう。
「そう言えば何枚あるの?」
「3枚。全部愛歌が引いていいよ」
「えー、お兄ちゃんは引かないの?」
「さすがにこの年でねぇ」
「おじさんみたいなこと言って……。お兄ちゃん20代でしょう?」
妹に呆れられてしまった。そして1枚を無理やり渡される。
「お金はお兄ちゃんから出てるんだから、1枚はお兄ちゃんね」
抽選会場でいつまでももめていても仕方ない。それに単純に回すだけだ。
慶一郎はあきらめて、愛歌とともに並ぶ。
「はい、では1回です」
係の女性に抽選券を渡して、慶一郎は何も考えず、ぐるりと一回回す。すると金色に光ったボールがポトリと落ちた。
それと同時に大きな鐘の音が鳴る。
「おめでとうございます!特賞!香港旅行です!」
しばし、意識が飛んだ……。
そしてもう一度鐘の音が鳴って、慶一郎は現実世界に戻る。
「お兄ちゃん、助けて……」
「愛歌?」
隣で別の抽選台を回していた愛歌が固まっていた。
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