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その日、夕方買い出しに行ったアルバイトのハジメの帰りが遅いと気づいたのは、買いだしを頼んだパンが切れてからだった。
「困ったなぁ」
食材切れを起こす前にハジメに頼んだのだが……。
「ハジメ君が遅くなるなんて珍しいね」
学校が終わり、夕方から店を手伝ってくれる妹の愛歌が時計を見ながら言う。
確かに妹の言う通りだ。言われたことをきちんとこなすハジメがサボり目的に買い出しに時間をかける真似はしない。
「私ちょっと外、見てくるね」
愛歌にそれを任せる。扉を上げると同時に小さな愛歌の悲鳴が上がった。
「ハ、ハジメ君?」
「助けてくれ、愛歌……」
ハジメの救援要請に慶一郎も慌ててカウンターから出る。入り口に立っているのは両手にいくつものビニール袋、そのうえ持ちきれないものを両手に抱えたハジメの姿だった。とにかく愛歌と手分けして、ハジメの両手に詰まれた荷物を下ろしてやる。
「どうしたの?こんなに買い出しを任せてはいないけれど……」
「もらった……」
「は?」
「何か……いっぱい押し付けられた……」
19になるという彼は年ごろの男の子にしてはかなり細い腕でカウンターにあった椅子をつかむ。
とりあえず、彼にアイスティーを飲ませてから、事情を聞く。
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