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もともとハジメは食が細く、身長のわりに体重がないため、いたく近所のおばさま方から心配される傾向にある。そのためか店をやっている女性から普段から物をもらうことも多い。
しかし今日は異常事態と言っても過言ではなかった。
話を聞けば、ただパンを買いに行ったらしい。もともと取りに行くと連絡をしていたので、サンドウィッチ用のパンはすぐに用意してもらった。しかし、その時、今日は客が少なかった、このままではロスになるせっかくだからうさぎやのみんなで食べなさいと残っていたパンを両手いっぱいに持たされたらしい。
しかしそれだけで終わらなかった。
ハジメは帰り道、かわるがわる店のおばさんたちに呼び止められ、有無を言わさず『余ったからこれ食べなさい』と持たされたらしい。
それがコロッケ30個に生のサンマにエビにいくらやウニ、牛の希少部位、メロンにブドウ……。
「断った……。俺だって断ったんだ」
随分と精神をごっそりと削られたハジメはアイスティーのグラスをわなわな震わせる。
「それでも無理やり持たされて……。高価なものだからもらえないって言っても、あの人達、無理やり荷物を積み重ねていくんだ」
「えーっと……」
これはきっとハジメが悪いものではない。
彼は決しておばさんたちにいい顔をするわけではない。むしろ女性相手の接客は苦手としている。
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