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遠い目をする愛歌とすごく疲れた顔をしているハジメ。慶一郎だけがなんとか店の主としてこのいかんともしがたい状況の打破に頭をフル回転させる。
「こちらのプリン、明日までの日持ちですよね。もしよければ、うちの店で出しましょうか?もちろんそちらさんのプリンであることを宣伝させてもらいますし、利益も払います」
「いいのよぉ、もうあげるものだし。……でも、もしうちのプリンだと言ってうさぎやさんで出してもらえればうれしいわ。あーなんだったら、カスタードクリームもいる?うち明日は営業できないから生クリームと牛乳も譲るわよ」
「あぁ、いえ、そういうわけでは……」
「本当に今日は変な日なのよね」
そんなケーキ屋の奥さんの一言に一同首をかしげる。
「聞いた話、魚屋の大型冷蔵庫は壊れるわ、八百屋は仕入れ量を間違えたって。肉屋の旦那さん、夕方に足をくじいて立っていられないとかで、病院に行って営業できないし……。さっきパン屋の職人さんと話をしていたんだけど、なぜかそんな日に限って、お客さんは商店街に来ないのよねぇ……」
「そ、そうですか……」
慶一郎はハジメがもらってきたという山のような品の出所に納得がいった。
が、あまりの偶然に、なんだか嫌な予感も同時に抱えていた。
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