うさぎやと神様のご利益

8/14
前へ
/14ページ
次へ
 それから数日後。日曜日に店で使う皿を見るためにデパートに行った時のことである。 「もうこの間のびっくりしちゃった……」  一緒についてきてくれた妹の愛歌がふーっと大きなため息をつく。 「ハジメ君が大量の貢物をもらってきた騒動?」  十夜が茶化して表現したものを、慶一郎も使わせてもらうことにした。 「そっちじゃなく、コンビニでお金もめたこと」 「あぁ、そっちね」  これは愛歌が経験したことだ。  なんでもお昼用にと飲み物とパンを買っていたらしい。そのとき千円札を出したはずなのに、なぜかレジの人に一万円札と勘違いされて、払ったよりも多くのお金が返ってきてしまった。  真面目な慶一郎に似て、愛歌も間違っていることをそのまま享受できず、その場でもめてしまったらしい。  後日、防犯カメラや売り上げから愛歌の言葉が正しいと分かり、お金は正しくやり取りされたのだが、それまで、愛歌は随分と腹の中にやきもきとしたものを抱えていたらしい。 「うんうん、でも無事に解決してよかったね」 「うん、今でももめてたら、なんかズルしたみたいで、ずっともやもやしてたと思う」  そんな良い子に育ってくれた愛歌を慶一郎は大切に思う。     
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加