14人が本棚に入れています
本棚に追加
今は父の夢である喫茶店を頑張りたいという自分の夢に巻き込んでしまっているように生活してしまっているが、できれば、愛歌には愛歌の夢を持ってほしいと思うし、心の底から妹の幸せを願っている。
それは妹が決めることだから、慶一郎は見守ることしかできないけれど……。
エスカレーターを昇ったCDショップで世界的に有名なピアニストの曲を大々的に宣伝していた。
慶一郎はそれを脇で見つつ、その店を避けようと、愛歌に別の話題を振る。
「そういえば、さっき下で買い物した時、抽選券をもらったよ」
「へー昔、ガラガラ回すの楽しかったなぁ」
そういえば妹が幼いとき兄妹で一人一回だというのに妹が回したがったのを思いだした。
「せっかくだから回そうよ、愛歌」
「外れしか当たる気がしないよ」
確かに、そうそう当たりが出るものではないだろう。
「まぁまぁ、時間もあるんだから。せっかくね……。それ回したら、何かおいしいもの食べて帰ろうよ」
「そうだね。もう甘い物をハジメ君たちにお土産で買ってたら嫌な顔するだろうなぁ」
「あはは」
あの時は結局、うさぎやのメンツでは食べ切れず、十夜の家に持っていき、最終的に残った日持ちのしないケーキは十夜の姉に仕事先で配ってもらった。パンも愛歌が学校で持っていってなんとか消化しきった。コロッケはまだ冷凍されているものがある。
「今度は食べ物じゃないものがいいなぁ、ね、お兄ちゃん」
最初のコメントを投稿しよう!