うさぎやと神様のご利益

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うさぎやと神様のご利益

 お客様は神様です。  そんなことを誰が口にしたのだろうか。  ここは産右(うぶう)神社のおひざ元。甘味喫茶店・うさぎや。  うさぎやのコーヒーを求め、今日も神様が店を訪れる。  なお、『お客様は神様だ』なんていう文言はこの店に限っては比喩表現ではない。  本当にうさぎやには神様がお客様としてやってくるのだ。  甘味喫茶店・うさぎやの店主、慶一郎には今困っていることがある。  それはお客さんの一部を占める神様の行動である。 「うーん」 「どうしたのじゃ?」  カウンターの定位置でコーヒーと抹茶アイスを楽しんでいた朔が声を上げる。  この和服姿の不思議な少年は神様であるらしい。しょっちゅう神様に口コミでこの店を教え、神様がうさぎやに来るきっかけにもなる存在であるという。 「あの……お隣にいたお客さんですが……」  そう言いながら慶一郎は朔の隣の席に置かれた空のコップを見る。 「ふむぅ。いたのう。……おや、いつの間にか帰ったか?」 「お客さんが増えるのはいいのですが……」  慶一郎はカップを片付ける。 「神様のお客さんはお金を払っていかないケースがあって……」 「むぅ、それはいかんぞ」     
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