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「予想以上に顔の良い男だった」
そればかりは自分にはわからない。
「まぁ、人間の中では比較的異性に好まれる顔だろうな。そして、猿田彦。お前は神の中で最も醜い顔をした男だ」
「朔さーん!」
自分への評価はさておき、
「本人の前でそういうこと言っちゃダメ!」
「しかし、事実じゃ」
けろりとした顔で朔は首をひねる。
「そういう問題じゃなくて!」
だからと言って口にしていいものではない。
「おおかた、恋人からわしの話を聞いて、嫉妬と邪推をしたのじゃろう?で、とりあえず様子見に来てみたと……」
「あぁ、ダメだ」
猿田彦はひどく落ち込み、テーブルに突っ伏している。
「このようなところに鈿女(うずめ)を連れてくれば……、あぁ、私などもはや捨てられてしまうだろう」
「そ、そんなことありませんよ!」
相手のことは全く知らないし、慰めにならないかもしれないが、慶一郎はとりあえずフォローを試みる。
「そもそも私のような醜い顔をした者が来ていいような場所ではなかった」
「誰もそのようなことを気にしません!」
「店主殿は顔が良いからそうおっしゃる。このような醜い鼻を持った者の気持ちなどわかるはずもない」
外見をとやかく批判される。確かに慶一郎にその経験はない。
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