フレグラント

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「おはよー 夏夜!」 友人の冬華が待ち合わせ場所の住宅街の公園の前で、私に向かって手を振る。 「おはよー 冬華」私は小走りで彼女の元へ行く。 「昨日の嵐の番組みた?」 「見た見た!」 「面白かったよね~。あの場面がーーーーー」 いつものように言葉を交わしながら学校へ向かう。 長袖の開襟シャツで来たが、少し肌寒い。カーディガンを持って来ればよかったと少し後悔した。 住宅街を抜けると輝く朝の太陽とともに、花園が広がる。花園といってもそんな壮大なものではなく、小さな公園の敷地ぐらいの大きさで、普段は入ることができない。そこを通る時に花を見るのが毎日の楽しみだ。風にのって花の匂いがする。 金木犀だ。もうこんな季節になったのかと感じさせられる。花園を過ぎると冬華がいきなり 「見て見て!夏夜!見て!」と空に指をさして、大きな声で言ったので、空を見上げた。 「あの雲 リスの形だね」と冬華がニコッと笑った。 言われてみれば確かに見える。今日はとことん季節を感じさせられるなぁと思った。 そして学校に着いた。学校の授業が終わり、冬華と一緒に帰った。 「今日も授業疲れた…。 化学式意味分かんないよ…」 疲れからか、今日の話は愚痴で盛り上がる。 すると花をスーっと通る匂い漂ってきた。 金木犀だ。すると冬華がいきなり 「見て見て!夏夜!見て!」と空に指をさして、大きな声で言ったので、空を見上げた。橙色の空がとても綺麗だ。 「あの雲 リスの形だね」と冬華がニコッと笑った。 ん?これは朝聞いた言葉だ。そして彼女に尋ねた。 「え?何言ってんの?そんなこと言ってないよ~」 彼女は普段から軽い感じの喋り方だが、こんな嘘をつく人ではない。少しぼーっと考えていると、 「デジャヴってやつじゃない?あのほら、なんか二度体験した気分になるみたいなやつ」 確かに私の思い違いかなと思い、そのまま歩いた。
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