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飼い猫が潜り込んだのかな、とあたしは寝ぼけながら寝返りを打ち、柔らかな吐息へ手をかざした。
すべすべして気持ちのよい、なだらかな肌。
猫じゃなかった。こんもりした鼻がある。ぺしゃりと指先につぶれる唇も。
人だ。
人?
ぱっと目を開けると、真っ白な陽光のなか、チューブから出したばかりのような青い人が横たわっている。
青い男??
「……っ!」
悲鳴すら出せない。後ろに飛び退こうとすると、ごん! とベッドから落ち、腰を床に打ち付けた。
武器になるものを探す。
部屋にはイーゼルと、パレット……小さいパレットナイフもある。
パレットナイフを剣に、パレットを盾に、あたしは青い男ににじり寄った。
美大に通いはじめて2年、こんな青は初めてみる。
とにかく濃い。群青に近い気がする。
やや長めの髪も、肌と同じだ。
メガネがないとよく見えないけど、つやがなく、マットで少し影がある。その質感に目をすがめて観察を続け、息を飲んだ。
初めてじゃない、この青は。
「う……」
低くうめきながら、男が瞳を開けた。
あたしを見つけたのは、ラムネのガラス瓶みたいな澄んだ瞳。白目の部分もほんのり、青い。
まつげが長い。シャープな頬の輪廓、くっきりとした二重の瞼、きりりと整った眉。
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