クリスマスの日の事件

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帰ってからも志保の怯えた姿を思い出し… 志保の気持ちを思うと心底その男が憎くて 怒りがこみ上げてきました。 啓介が言葉少なめに言いました。 『 明日被害届けを出した方がいい 』 「 そうだね。付き添って行ってくる 」 『 可哀想に…相当怖かったと思うよ…   出来るだけ傍に付いていてあげないと… 』 「 うん。明日も様子見にいってくる 」 『 ねぇ、梨香ちゃんも油断しないで   気をつけて。いつでも車使っていいから 』 そう言い、 啓介は私に車のキーを渡してくれました。 「 ありがとう 」 今日は自宅に帰るつもりでしたが一人になるのが 怖くて、啓介の家に泊まりました。 中々寝付けない私を後ろからずっと優しく  抱きしめてくれました。 もし、啓介がいてくれなかったら、 気が動転していた私は冷静な判断が 出来なかったと思います。 傍に付いていてあげないと… 啓介の言葉1つ1つを思い出すと、 そこには確かな優しさがあり、 その人の立場になって人を思いやる姿が ありました。 こんなにも人に優しい人は初めてです。 時には辛い思いもしてきたからこそ、 こんな優しくなれるのでしょうか? 多分違うと思います。 辛い事も経験し、 その分ご両親に愛情を注がれながら、 人を愛し、愛されてきたからだと思います。 私も啓介の様な人で在りたいと思いました。 翌日、警察に被害届けを提出し、 その彼は警察から接近しないように 厳重忠告を受けた様です。 志保はしばらくエロ美の家に居候したあと、 引っ越しを決めました。 それから彼が姿を表すことはなく、 平和な日常を取り戻しました。 志保は啓介に何度も手話でお礼を伝えました。 私もエロ美もお礼を伝えました。 『 美人トリオの笑顔が戻っただけで   僕は満足。引っ越し祝いやろうね 』 啓介はそう言いました。 私が二人に伝えると、 志保はまた泣き笑 エロ美も泣き笑 私も泣き笑 啓介は困った顔で笑い、私の肩を抱きました。 今にも増して啓介を好きになりました。 この好き度、どこまで上がるの(笑)? 私の心の声でした。
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