翔平くん

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翔平くん

何度か名前を出している翔平くんは 啓介のバスケ仲間の1人。 ある日新宿でバッタリ翔平くんに 会いました。 偶然に驚きながらも自然と手は動き 手話で少し会話をしました。 少し元気がないように感じました。 「 翔平くん疲れてる? 」 『 色々あってね、少しまいってる 』 「 大丈夫? 」 『 少しだけ聞いてもらえる? 』 「 もちろん私で良ければ聞くよ 」 そうして急遽、仕事帰りの私達は そのまま飲みにいくことにしました。 啓介の後輩ということもあり、啓介には 飲みにいくことを伝えておきました。 翔平くんと私は居酒屋に入りました。 やっぱり元気がない翔平くんから聞いた話は とてもショックな内容でした。 翔平くんには 付き合って3ヶ月の彼女がいました。 その彼女は聞こえる人。 翔平くんの猛アタックで 彼女とは付き合ったそうです。 付き合い出した初めは楽しくて、 彼女も少し手話を覚えてくれたみたいで コミュニケーションは何とか出来ていたと 翔平くんは思っていましたが、 彼女はそうは思ってなかったようです。 段々と会話が途切れ会う事も拒否され、 別れて欲しいとラインで告げられました。 原因が分からない翔平くんは、 彼女に理由を聞いたそうです。 その理由は翔平くんの耳の事だけでした。 聞いて欲しいことが伝わらない。 何を話しているのかわからない。 こんなんじゃ付き合ってる意味ない。 気持ちが冷めたと言われたそうです。 そして翔平くんの耳が聴こえていたなら、 別れることはなかったと言われ、 翔平くんはひどく落ち込んでいました。 そりゃそうです。 翔平くんの内面ではなく 耳だけが原因だなんて・・・ 翔平くんの気持ちを思うと 心が痛くて言葉を失いました。 『 今までで初めての聴こえる彼女だった 』 「 そうだったんだね・・・」 『 耳が聞こえないのは俺のせい? なんで俺の耳は聞こえない? 今更そんな事考えても無意味なのに バカみたいに考えちゃったんだよね 』 「 耳の事だけで離れてしまう人は 悲しいけどいるかもしれない。 でもそうじゃない人も絶対いる。 本当に好きならその人の事もっと 知りたいし理解したいと思うよ・・・ 」 『 そんな風に思ってくれてる彼女がいる 啓介さんは幸せ者だね 2人が心から羨ましいよ 』 「 いやいや、気の強い女だしね、 優しい啓介は困ってるかもだよ笑 」 『 啓介さんはりかちゃんに声で話す? 』 「 最近はよく声で話してるかな 」 『 ちゃんと理解出来てるんだね・・・ 』 「 そうだね、発音上手だと思うよ 」 『 いいな。俺の発音はひどいから 声を出して欲しくなかったんだって 嫌ならその時に言ってくれたら 声なんて出さなかったのに 』 「 あのね、その女絶対おかしいわ 全て人のせい。 自分を省みることできない人じゃん 翔平くん別れて正解だよ もっと素敵な人と出会えるよ 」 『 ありがとう。何か話せてスッキリした 』 そう言ってくれた翔平くんは いつもの翔平くんらしく笑顔になりました。 翔平くんと別れてからスマホを開くと 啓介からのラインが入ってました。 もう帰ってることを伝えたものの、 何だかやるせなくて・・・ 1人でカフェに入りました。 翔平くんの話を考えて また心がズキズキ痛みました。 啓介と出会った頃を思い出しました。 その頃の啓介は私に言いました。 もう恋愛はしたくないと。 啓介も耳が聞こえない事で 深く傷ついたのだろうか・・・ 啓介の過去の恋愛。 聞いてはいけないと分かりながらも 気になってしまう。 そんな事を考えてるとは思ってもいない 啓介から心配するラインが入っていました。
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