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後輩
私の所属する部署は、比較的仲が良い。
自分の意見は伝えるという事を各自、
大切にしているからだと思います。
良く飲みに行くし、くだらない事から
真剣な話まで何でもありです。
ある日、残業をしていた時です。
事務の後輩も残業してました。
気になって後輩に声をかけました。
私
「 大丈夫? 早く帰ってね 」
後輩
「 大丈夫です 」
後輩はまだ若いのにしっかりしてて
とても可愛い子です。
田舎の方弁がたまに混ざりそれもまた
可愛くて部署内でも癒し系の存在です。
残業を終え帰る準備をしていると、
後輩から少しだけ飲んで帰りませんか。
と誘われました。
予定も無かった私は断る理由もなく
2人で会社近くの居酒屋に入りました。
最近の近況や仕事の事、恋愛話でも
盛り上がってた時です。
後輩が相談したいことがあって・・・
と話を切り出しました。
その後輩は地元の大学を卒業して、
就職を機に上京しました。
都会での生活にも慣れ仕事にもやりがいを
感じて充実していたのですが、
田舎の実家に暮らすお父様が
入院中である事を聞きました。
病状は思わしくなく…
余命宣告を受けたと私に伝えてた後
後輩は泣き崩れました。
お父様はまだまだ若いです…
仕事をテキパキこなし、
いつも笑顔でそんな素振りは
全く見せる事なく、
私は気づきませんでした。
笑顔の裏で人知れず辛い思いを
抱えてたんだと思うと私も涙を我慢する事が
出来なくなっていました。
後輩
「 実家まで遠くて毎週帰るのに精神的にも
体力的にも厳しくなってきて、
でも父と過ごす時間は限られていて、
大好きな父なので
後悔だけはしたくなくて、悩んだ結果
退職しようと思います 」
後輩はそうハッキリと言いました。
後輩の気持ちは痛い程理解出来ました。
ただ、本当は退職を望まないのなら
長期介護休暇を申請してみないかと
私は後輩に確認しました。
後輩は、ありがたいけれど迷惑がかかると
戸惑っていました。
もし良かったら私も一緒に部長に
お願いする事を伝えました。
翌日部長に時間を頂き事情を説明しました。
部長も心を痛めた表情で最後まで黙って
話を聞いてくれました。
部長はそういう制度があり、
申請できる会社だという事を説明したあと、
「 すぐ申請書を書きなさい。
私が捺印を押して人事に話すから。
介護休暇で足りなくても
有給も合わせたらいいからね、
こちらは何も心配いらないから
お父さんとの時間を大切に… 」
いつもは厳しい部長ですが、
その言葉に、
この人も親であり息子なんだと思いました。
後輩は大粒の涙を流し何度もお礼を
言いました。
無事申請は通り、
後輩は引き継ぎノートを完璧に完成させ、
長期休暇で実家に戻りました。
増員はないので各自の仕事の負担は
増えますが、文句など言う人は
1人もおらず自らやりますと全員が
声を上げました。
本当に最高の部署で最高の仲間と
働いているんだと改めて実感しました。
つづく
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