1人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
第三十九章 加藤海将
――突然、美姫の背後から声が聞こえた。
「その話の続きは、別の場所で、お願い出来ないかね」
みんなが振り返ると、制服姿の自衛官が腕を組んでこちらを眺めていた。
男の年齢は五十歳位だろうか、眉毛が濃く、目は切れ長で、頭髪は白髪まじりだ。
龍星が制服の階級章とバッチに視線を向ける。
(階級章は海自の三つ星……将官クラスか……このバッチは技術部だ)
「君は陸自第十二旅団普通科連隊の大地士長だね」
男が右手を上げて敬礼をすると、龍星は条件反射で男に敬礼を返した。
「はっ、そうであります」
(この男は、なぜ、俺の事を知っているんだろう?)
「私は海自技術研究本部長の加藤だ。よろしく大地士長」
加藤が右手を差し出して龍星に握手を求める。
(海自技研の加藤本部長……噂で聞いたことがある……この男は先守防衛システムの開発責任者だ)
「あっ、どうも」
龍星はあわてて彼と握手を交わした。
「それじゃあ、行こうか」
「えっ? 何処へですか?」
龍星が加藤に行き先を尋ねる。
「もちろん地下室さ、そうだろう、雅奉生君」
「ええ、そうですね」
奉生が加藤に返事をすると、彼は奉生の肩を軽く叩いて通路を歩き始めた。
最初のコメントを投稿しよう!