夢・告白・夏

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────完全に俺は,夢から覚めていた. 「っあ……って,もう昼か.」 セミの五月蝿い音を聴きながらも近くの時計を確認. 1時を過ぎていた. 今日は日曜だからまだ良かったけど, 平日なら仕事に遅刻は確定だった. 現実の俺────今年で26になる零崎 蒼は, 現在,畑仕事をしながらアルバイトしつつ1人暮しをしていた. 一応,夢という夢はある. だから,それを叶える為の努力も, 毎日しっかり行っている. 「あー……よく寝た.」 歯を磨いてから新聞を読む. 珍しく……今回見た夢のことは, まだはっきり覚えていた. あの夢を見たからといって, 現実の俺の生活に変化があったわけではない. 実は現在の嫁でした. なんていう,ありがちなオチもない. あったらそもそもこんな夢見ないだろうし, スーパー独身野郎のままだ. もちろんこのまま独身を続ける気もないけど, 出会いという出会いが無いうちは 大人しくしているつもりだ. そして, 夢の中で俺がついに告白できた初恋の人, 元同級生の卯田 碧は 現在, 若手声優として有名人になっていた. あの頃から言っていた本人の夢だったし, 叶って良かったなぁとは思っている. テレビやネットでもたまに見かけているけど, その度, なんだか嬉しくなったのは……やっぱり, まだ好きだったからだろうな. 現実の彼女には告白もできてないし, 下手したら俺の事すら覚えてないだろうけど, 今の俺は, 陰ながら彼女を応援できたら十分だった. 今日も, 明日もその先も, 俺が生きていれば, 必然的に寝るし,夢も見るだろう. もしかしたらまた,彼女に会うかもしれない. が, 夢に繋がりはほぼないから, 次に夢で会う彼女はまた別の存在. 今回はこれでおしまいなわけで. 最近は, 嫌な夢ばかり見ることが多かったけど, 久しぶりに……いい夢が見れた. 夢の中で一瞬だけ過ぎた俺の非現実な青春, しばらくは俺だけの,宝物だ.
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