夢・告白・夏

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────どうせ,夢の中だから. どうせ,ここは現実じゃないのだから. 起きたら全部忘れる. またいつも通り,夢の中の時に流され, 適当なタイミングで覚めてしまえばいい. ……いつもの自分ならそう思っただろう. 「はあっ……はあっ……! まったくッ……! なにがなんだかわかんねぇっ……! 」 真夏なのだろう, 吹き出す汗と, なんとなく感じる暑さ, 強い日差し, しばらく走り続けていたからか, 胸の鼓動まで騒がしい音がなかなか収まらない. 視界に広がる景色は, いつも見ている街並みが, ちぐはぐに繋ぎあっていた. そこにあるものがなく, そこにはないものがある. 夢ってこういう時が本当に面倒くさいものだ. 見たことがあっても あったことの無い人物には会え, 本来なら居るはずの人物には会えず, 毎度,夢には翻弄されている. この前なんて, なんとか必死に頑張って掴み取った 100万の札束を握りしめ, 夢の中だというのに大盛り上がりして, 目が覚めた瞬間, 呆然としていた. 少々のめり込みすぎだとは思うが…… 仕方ない. それでも夢は見てしまうのだから. 「どっちだ……?」 現実どおりなら行先に辿り着くのも容易いが, 見覚えのある分かれ道すらその先がちぐはぐな為, ゴールへ近づけるのか不安になる. とはいえ, 今はもう,ほとんど立ち止まっている時間も無い. いつ夢から冷めるかも分からない. 現実では叶えられなかったことが, ここなら,偽りでも叶う. 現実には何一つ残らないけど, それでも俺は……走るしかない. 「……!! 来た!!」 大体の夢では必ずスタート地点になる我が家. 今回は何故か,その我が家すら中継点だった. 「おおー……おお? でかくね?」 生まれてからずっと過ごしてきている我が家は, 現実と夢じゃ毎度なにかが違うが…… 今回は, やたらと大きい平屋だった. (土地の面積と噛み合ってないだろこの家…….) とりあえず敷地内に入り,家の裏口近くに向かう. (……! あった!) この場所に,現実と同じく自分の自転車が置いてあった. ただ, 俺が現実で今乗っているロードバイクでは無く, 2代前の学チャリだった. それもいわゆる晩年期のボロ仕様. (まあいっか……夢だししゃあない.)
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