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1,普通
普通、とはなんだろう。
時折、考えることがある。
普通とはその人の日常で、それに慣れてしまうとそれが普通になるのだろうか。
「行ってきます」
静かに言って家を出る。
学校までは約10分。本を読みながらゆっくりと歩く。
歩くのは楽しい。
時折“なにか”が見える。
そんな事を考えながら、私はある神社の前にいた。
いつのまに着いていたのだろう。
今日は月曜日。
私は周囲に人がいないのを確認し、鳥居の前で一礼した。
鳥居をくぐる。
古いお社の前まで来て、私はスクールバッグの中からもうひとつのカバンと1枚の人型の紙を取り出した。
式神。
一般的にそう言われるものだ。
私は印を結び、式を呼び出す。
現れた式は私にそっくりだ。
「由比、お願いね」
わたしがそう言うと、式は頷いた。
彼女は由比。私の式神だ。
由比にスクールバッグを持たせ、私はカバンを持つ。
由比はすっかり私になった。
「 行ってらっしゃい」
そう言って由比を送り出す。
由比が学校へ行くのを見届け、私は奥にあ る池へ向かった。
木々の隙間から光が降る。
池に光が当たった瞬間、池が光り出した。
蒼く、透き通った色。光を反射し水面はきらきらと光っている。 私は、池に飛び込んだ。
逆流する様な感覚-。
気がつくとそこは、別の場所だった。
空には龍が飛び、鎌鼬の子供達が遊んでいる。
いわゆる、“妖怪”だ。
ここには“妖怪”がいる。
毎週月曜日と水曜日と木曜日、関わってはいけない“モノ”たちが通う塾へ来る。
それが私の日常。
普通とはその人の日常で、それに慣れてしまうとそれが普通になるのだろうか。
それならば。
私の“これ”は日常だろう。
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