子猫の青い瞳のなかの

10/12
前へ
/12ページ
次へ
瀬木のあとについていくと、 木立に隠れるように、キャンピングカーが一台止まっていた。 いつもここで寝泊まりをしていると言う。 車の中は、冷蔵庫や簡易ソファのようなものまであって、ちょっとした家みたいだ。 遍が、ソファの上を転げまわる。 ミヤオがミャーミャーと鳴く。 「ミヤオにもごはんあげなきゃ」 俺はリュックから牛乳を出した。 瀬木はストローを切ってスポイトのようなものを作り、ミヤオに与えた。 ミヤオは、ぐんぐん飲んだ。 めやにを拭いて、ティッシュでおしりをマッサージして、おしっこをさせた。 こうしないと自力では出せないのだそうだ。 「目が青いな」 ミヤオの目をのぞきこんで瀬木が言った。 本当に澄んだ青色だ。 「キトンブルーか」 瀬木がつぶやく。 「え? 何?」 「キトンブルー。知ってるか? 子猫って、みんな目が青いんだよ。 二か月くらいたつと、目の色が変わってくる。青いままの猫もいるけどな」 「へえ。なんで?」 「メラニン色素の関係らしいけど。よく知らん。神様にでも聞いてみたら?」 この青い目は、俺達とおんなじ世界を見ているのだろうか。 それとも青いセロファンをのぞいた時みたいに、何か違うふうに見えているのか。 瀬木は、今日捕ったカモをしまい、 冷凍庫から何かの肉を取り出すと、調理して俺達に出した。 噛み応えがあって、淡白な味だ。 「これ、カモの肉?」 「ウサギ」 アッサリと瀬木は答えた。 ウサギなんて食べるのは初めてだ。 「なんでウサギは食べてよくて、猫は食べたらダメなんだろう」 思わずつぶやくと、 「まずいのかもな」 瀬木がミヤオをちらっと見やった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加