子猫の青い瞳のなかの

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キャンピングカーに、俺と遍の自転車を積んだ。 俺は瀬木に住所を告げ、送ってもらった。 ずいぶん遠くまで来た気がしていたが、車だとあっけないほど近かった。 家の近くのコンビニに瀬木は車を停めた。 「もうここでいいか? お前らの親に会うの、めんどくさいから」 「うん。色々ありがとう」 「和臣ぃ。殴られる時は、歯あ食いしばるんだぞ」 瀬木は口の端を曲げて笑って、俺にデコピンした。 俺は額を押さえながら、瀬木も昔、親に殴られたりしたんだろうか、と思った。 お別れに、ミヤオの背中をなでた。 「ミャー」 小さな体をのけぞらせ爪をたてて、迷惑そうにこっちを見た。 片方だった目が、いつのまにか両方ぱっちりと開いている。 キトンブルー。 仔猫のときだけの、不思議な青い目。 瀬木が、ミヤオの首の後ろを片手でつかんで、 「じゃあな」 俺達に手を振った。 「いい人だったよな」 自転車を押して歩きながら、俺は遍に話しかけた。 「そうお? 怖い人だったじゃん」 と、あくびしながら遍が言う。 「え? そうか?」 「鳥の羽むしってた時なんかさ、悪魔かと思ったもんね」 俺は思わず笑ってしまった。 同じ人に会っても、同じ景色を見ていても、どう思うかなんてそれぞれ違う。 仔猫の青い目に、世界がどう映っているかなんて、神様だって知りっこない。 「今日も晴れてるねえ、兄ちゃん」 遍につられて空を仰いだ。 さっきまで金色っぽかった空は、いつのまにか少しずつ青に染まっている。 ミヤオの目の色に似てる気がした。
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