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ポカンと小さな池があった。池の色は緑っぽく、深そうに見えた。
池を突っ切ることはできないので
(俺が忍者ならばひょいひょい池を渡れるだろうが)ほとりを周ることにした。
カモが四羽泳いでいる。
カモに似た黒っぽい鳥もいる。
またバアンと音が響いて、カモとカモに似た鳥がぶわっと飛び去った。
「兄ちゃん」
遍が俺のパーカーを引っ張る。
「怖いか? 帰るか?」
「帰んない」
くちびるを結んで遍は首を振る。
俺はポケットからキャラメルを取り出して、一個やった。
前かごの仔猫を確認する。
背中が上下に動いている。眠っているようだ。
すぐ後ろで、ガサガサッという音がした。
まさか、熊……? 振り返ったが、何もいない。
その時
「ぎゃあ!」
と誰かの悲鳴が聞こえた。
ハッとしてあたりを見わたす。遍は、と横を見るといつのまにかいない。
「遍!」
呼ぶとすぐに
「なあにー?」
と間延びした返事があって、遍がニコニコと、木の陰から顔を出した。
知らない男の人の腕をつかんでいる。声をあげたのは、この人だったらしい。
懐っこい遍のことだ、人を見つけて、急に話しかけるなりしたのだろう。
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